この作品が好きだ、このキャラクターが好きだ、このヒロインは俺の嫁だ(ぇ)などなど、皆さんの中にも「好きだ!」と叫べるものがアニメを見ていれば、何かしらあるとだろう。当然、私の中にもある。その中でも今回叫ぶのは、「好きなロボット」である。

やはり男の子は多かれ少なかれヒーローに憧れることと同じようにロボットに憧れるのである。

そんなわけで、今回は私が好きなロボットとして『新機動戦記ガンダムW』に出てくるロボット「OZ-00MS トールギス」について語らせていただきたいと思う。

これがトールギス!!
Tallgeese


もっと詳しいことを知りたい方は、画像で「トールギス」と入力して検索するか、本編の円盤を借りて観ると良いだろう。


さて、ではこのトールギスの何がカッコいいのかを語っていこう。


1.外観
まずはなんといってもその外観・フォルムだろう。白い。真っ白だ。これが主人公たちの乗る機体だというのならこの白さも納得するものだ。もちろん絶対というわけではないが、ロボットが多数出てきて戦うような作品においては「白い」ロボットというのは大抵主人公たちの乗るロボットに割り当てられるカラーのはずなのだが、このトールギスは主人公たちのロボットではない。そのライバルたちが乗るロボットなのである。

そんなギャップはもちろん、丸みを帯びた流線型のデザインも素晴らしい。そこから右肩にはドーバーガンという大型の火砲が、左肩にはラウンド(丸い)シールドがある。
まるで中世の騎士のようではないか。
ドーバーガンはさすがに火砲になっているが、長大な武装という意味では中世の騎士が持つランスのようだし、ラウンドシールドは言わずもがな(さらに漫画リメイク版では、正しく中世の騎士が持つようなランス状の武器まで装備している)。

さらに注目して欲しいのは、頭部だ。騎士のヘルム(兜)のように「目」に当たる部分は細長く、さらに頭頂部には髪飾りのような真紅のパーツがある。騎士を模したデザインの素晴らしさもさることながら、ライバルキャラが乗るにしてはあまりのカッコ良さだ。人の顔に近い形状は、白いカラーリングともども主人公たちの特権デザインのような先入観もあった中で、ライバルキャラがこれに乗って主人公たちを苦しめる。

そんな外観がカッコいい。



2.開発系譜
次に提示したいカッコいい要素は、その開発系譜である。

このトールギスというロボットは、『新機動戦記ガンダムW』においてその世界で史上初めて造られた戦闘用ロボットなのである。実にその開発が行われたのは、本編の二十年前。「二十年前のロボットが、主人公たちの乗る最新鋭のロボットと互角に渡りあうの?」というのは疑問もあるかもしれないが、実際にそうであることも魅力なのだ(もちろんパイロットの力量差もあるが)。

あまりに性能が高過ぎて当時扱えるパイロットがいなかった、という中二病のような設定もそそる。さらに開発系譜でいえば、このトールギスをデチューンすることで本編の敵の量産型ロボットが数多く誕生していく。「試作機よりも量産機の方が性能が低い」というのは、ロボット物の常識にして私たちの世界における非日常であるのは有名なところだが、「既存のものの汎用性を高める(誰でも操縦出来る、兵器としての普遍性の追求)」のために性能を落とし、コストを下げて量産化を可能にさせていくという流れが素晴らしい。

しかし、それだけではない。

実は主人公たちが乗っているロボット(ガンダム)も、このトールギスの流れを汲んでいるのである(まぁ、トールギスがこの世界における全てのロボットの始祖的存在なのだから当たり前と言えば当たり前なのかもしれないが)。それもそのはずで、このトールギスを作った技術者の内の五人が、その後それぞれ一人一機ずつ造ったのが主人公たちの乗るガンダムというロボットだったのだ。

これが意味するところは何か?

それは突き詰めれば、「主人公たちとライバルは年代は違えど同じ技術者が造ったロボットに乗って戦っている」ということだ。性能差はもちろんあるが、いわば「同じ土俵の上での戦い」なわけだ。そこもロボット同士の戦いとしては熱く燃える部分ではないか。



3.性能
二十年前のロボットで最新鋭のロボットと渡り合えるだけの性能がある、ことは前述で語った通りだ。では、改めてトールギスの性能について語っていく。

トールギスの最大の魅力はこの性能であり、開発コンセプトだ。それは「砲弾をも弾き返すために機体に与えた重装甲。それによって重くなった機体を大推力で補う」というものだ。
言うなれば、「重装甲」「高機動型」という本来なら矛盾してもおかしくないこの二つを両立させているのである。

基本的にこの二つのコンセプトはバラバラに「高火力」と繋がることがほとんどだ。例えば「重装甲・高火力」とか、「高機動・高火力」とか。そこで敢えて「重装甲」と「高機動」の二つが重なるところにロマンを強く強く感じるのである。

実際にトールギスはこの二つの要素を見事に実現している。

例えば装甲。これは基地から発射されるビーム砲を雨のように喰らっても傷一つつかなかったほどだ。基地のビーム砲というのは基本的に大型で、またエネルギー供給も安定していることが多いため出力が高いと考えることが出来る。そのビーム砲を喰らってもびくともしないほどの厚さがあるのだ(まぁ、これは演出によるところが多分にあったかもしれないがw)。

そして機動力。このトールギスに初めて乗ったライバルキャラ・ゼクスは一瞬にして15Gを超える加速を叩きだしたことに対して「殺人的な加速だ」と漏らし、その後不整脈などの身体的な不調を訴えるほどだった。また、そのあまりに強烈なGで機体は無傷なのにパイロットが死亡したケースすらあるほどだ。

こうして外観、系譜、そして性能。この三つが揃っているところこそがトールギスの素晴らしい部分だろう。


4.余談
さて、このように私が大好きなロボット「トールギス」だが数々のバリエーション機があるので少し紹介しておこう。

まずはトールギスII(2)。これは物語当初からのボスだったトレーズ・クシュリナーダというライバルキャラの一人が乗ったバリエーションである。基本的な違いはカラーリングと、頭部の造形がより「ガンダム」っぽくなったことだけだったのだが、面白いのは純白だったトールギス同様、その機体カラーは青と白という主人公っぽいカラーリングだったことだろう。こういった点からもトールギスが他のロボット作品のライバル用ロボットと一線を画していることを物語っている。

実はこのトールギスII、本来は真っ黒なカラーリングの「ブラック・トールギス」になる予定があった。こちらは初期の漫画版で登場している。

次はトールギスIII(3)。こちらは本編の続編OVA・劇場版である『新機動戦記ガンダムW エンドレスワルツ』で最初のトールギスに乗ったゼクスが新たに乗った3号機である。設定はいろいろと変更は紆余曲折があり、「ガンダムエピオンのテストヘッドである」「トレーズがゼクスとの決闘用に用意していたが不必要だった」「目的は不明だが、トールギスIIと同時期に開発・建造が進められていたが本編では調整が間に合わず出なかっただけ」などと言われている。

こちらは既存のトールギスよりも装甲が増えていたり、武装が強化されたりとなっており、よりケレン味の強いものとなっているが、外観もディティールが増え過ぎて複雑になったほか、「ドーバーガン」「シールド」「ビームサーベル」とシンプルだった武装が複雑化しており、ファンの間でも外観のカッコ良さは認めつつトールギスのシンプルさが失われているという声もある。

そして、現在ガンダムエースで連載中の続編『新機動戦記ガンダムW Frozen Teardrop』に登場するトールギス・ヘブンである。ただしこれに関してはまだまだ情報が少ないので何ともいえない部分もある。

他にも先の『エンドレスワルツ』の小説版などに出てきた青いトールギスであるトールギス始龍(シロン)、また『GジェネレーションCROSS DRIVE』というゲームではオリジナルのトールギスが出ているほか、この記事で紹介したトールギスもTV版のほか、最近EW版という一部形状やカラーリングが異なるものが追加されたりもした。



5.最後に
このようにさまざまな発展も魅せているトールギスの系譜。それは、私だけではなく多くの方々にとっても「トールギス」というロボットが魅力的だからこそだと信じたい。

どうしてもロボット作品の場合、主人公側とライバル側で機体のデザイン的な差別化を図ることも少なくない。その方が分かりやすいからだ。しかし、せめてライバルたちが乗るロボットくらいはやはりカッコ良くなくてはいけないのだと思う。それこそ、性能はともかく主人公たちのロボットを凌駕するくらいのカッコ良さが敵にあって、そのカッコ良さを引き出せるようなロボット作品の方が観ている側としてはいろいろな部分に思い入れが出来るし、思い出にも残るような気がするのだ。

今回は私が語らせていただいたが、皆さんの中には好きなロボットはいるだろうか? 冒頭で上げたようにロボットでなくてもいいのだが、誰かに語れるほど好きなものを持つというのは大切なことだと改めて感じた。


さて最後ではあるが、この「大好きなロボットについて語る」をこの度、C85こと冬のコミックマーケットで頒布する『アニプレッションVol.6』でも短編コラムではあるがやらせていただいている。お題はブラックサレナ(『劇場版 機動戦艦ナデシコ the prince of darkness』より)だ。もしよければ、そちらも読んで頂ければ僥倖である。