こんにちばんはございます。
「もす!」の神酒原です。

第1話の時からずっと読んで下さっているみなさん、一週間ぶりです。この第14話から初めて記事を見つけたみなさん、初めまして。第1話から一気に読まれたみなさん、そのエネルギーに敬服します。
この記事は、アニメを見て楽しんだ人がより楽しめる、そしてイマイチだと感じた人も見方を変えてくれることを目指しています。

最近よく勘違いされるのでさらに説明するのですが、この記事は作品『氷菓』を客観的に紐解こうという、批評でも考察でもありません。私が「もす!」で書いている感想に対比して便宜的に考察と呼ばれることはありますが、結局は私の主観であり、タイトル通り私の感じた面白さを紹介する意図があります。
そこが分かった上でコメントして下さるなら「これはこういうことなんじゃない?」という意見も大歓迎ですが、あくまで作品を楽しもうという姿勢をこの記事のコメント欄では要求したいです。

記事内は原作ネタバレありません。
それではどうぞ。
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神高祭2日目!

3日間に渡る神高祭も、2日目に突入しました。
1日目に2話かけており、2日目もまだお昼を過ぎたばかりとなると、やはり合計6話を使いそうです。小説のアニメ化で1巻で6話を使うパターンはそこまで珍しいわけではないですが、その間ずっと文化祭というのは、なんとも贅沢な限りです。

さて、前回の記事は私情により時間が取れず簡易版になってしまってあまり語れなかったのですが、前回は1話まるごと使った緩急の表現が印象的でした。
クイズ研のクイズトライアルと、漫研での論争です。クイズトライアルがどうロークオリティだったのかは論じましたが、これをメリだとすると、論争はハリ、つまり前半と後半でメリハリをつけていたということですね。武本康弘監督は緩急のつけ方が抜群に上手い演出家ですが、1話をまるまるその構成にしてしまったのには驚いたものでした。

しかしそれだけでは飽き足らず、恐らく意図的に、第13話と第14話でも緩急をつけています。
イベント比較をすると分かりやすいですね。そう、クイズトライアルとワイルド・ファイアです。


ワイルド・ファイアのハイクオリティぶり

クイズトライアルのロークオリティぶりについては前回の記事を参照してもらうとして、今回お料理研が主催したワイルド・ファイアは、なんともクオリティの高いイベントになっていました。

セットがすごいのは、クイズ研も一緒でした。ここの情熱のかけ方は同じものがあったのでしょう。
しかしお料理研にはさらに、入須の言い方を借りるなら、技術がありました。

それは進行によく表れています。
始め方から素晴らしかったです。クイズ研でも最初に「クイズ王に、なりたいかーっ!」などなど煽りをかけていましたが、どちらかというとお祭りの熱気に乗じた力技でした。
しかしお料理研はどうでしょう。簡潔な出場者紹介から手慣れた解説でしたが、始まりの合図が、司会が「ワイルドー!」と言ったあとに選手・観客も一緒に「ファイアー!」と叫ぶものでした。つまりこれ、始まる前に仕込んでいたということですね。お祭りの熱気だけに頼らない、自分たちで場を盛り上げる努力がしっかりされていて、私は非常に感心しました。

そして料理中の実況が素晴らしい素晴らしい。
的確に状況を拾い上げ、簡潔に説明し、素早くコメントを入れる。まるでテレビでスポーツの実況を聞いているかのようでした。しかも(当然ですが)司会もお料理研部員ですから、珍しい料理にも綺麗に食いついてくれて、料理の分からない視聴者(例えば私とか)にとっては気持ちのいいものがあります。ギセ焼き?なんて、映像だけだとまったく意味が分かりませんが、あんな風に盛り上げてもらえると「なんか知らんがすごいんだな!」と力技で納得させられます。

横で解説風についている部長も大変いい味を出していましたね(お料理研だけに)。解説「風」と書いたのは、実際の実況では横につく解説はプロですが、この場合は実況する司会もプロだからです。
つまり、基本的にはいらない(笑)。通常の実況では「これはどういうことですかね?」「こうこうこうなんですねぇ」という会話が起こるところでも司会である副部長がほとんど拾ってしまうので、部長は完全にいらない子状態になっていました。
しかし全部1人で拾ってくれるのでテンポが非常によく、また部長のコメントもその合間合間に滑り込むように入ってくるので、もしかしたらテレビで聞く実況よりも面白かったかもしれません。

部長のCVは毎度おなじみ杉田智和でしたね。半分以上がアドリブなんじゃないかと思うほどの暴走ぶりでした。感想ブログを回ると「作品に合ってない」とする意見もありましたが、京アニらしいではあります。京アニはこういう暴走をよしとする傾向がありますね。

とまぁ、イベントのハイクオリティぶりはこんな感じですが、イベント自体が盛り上がるには出場者のクオリティも重要になってきます。挑戦者がへなちょこでは、料理だろうがクイズだろうが盛り上がりませんね。3人が起立しちゃう『アタック25』なんて面白くもなんともありません。

そしてその辺も抜かりないのでした。
古典部のポテンシャルがとんでもないですね。里志に若干「知識ばかりで経験が足りない」感がありましたが、3人ともが素晴らしい料理を見せてくれました。
特に豪農千反田家息女さんは目を見張るものがありました。桂剥きってあんなにも美しいものなのですね。ここでは作画も光ります。
折木の支援を受けた摩耶花のかき揚げ丼も素晴らしかったです。是非とも食べたくなる、そんな料理の数々でした。

その他、前回のクイズトライアルではBGMも極力抑えていたところ、ワイルド・ファイアでは緩急もつけつつさまざまなBGMを駆使して画面を効果的に盛り上げるなどの工夫も見られました。料理というのはフィックス(カメラ固定の長回し)の絶好の使いどころですが(作画の労力を大変要しますが、京アニなら可能のはず)、クイズトライアルでは使っていたこれをあえて使わなかったのはテンポの速さを重視したからでしょう。

などなど、ハイクオリティぶりがこれでもかと表現されていた第14話でした。
前回との対比も恐らくわざとでしょうから、これは本当に脱帽ものです。


折木の参入

わらしべ長者展開で手に入れた薄力粉が最後の決め手になりましたね。
しかしこれは本当に面白い展開でした。

今回折木は、ほとんどグラウンド側の窓辺から外を覗いていましたね。ワイルド・ファイアが始まる前からそうでしたから、よほどこの料理バトルが気になっていたようです。まさか自分が出たかったとは思っていないでしょうが、仲間たちの勝敗が強い関心ごとだったことは間違いないでしょう。余談ですが折木が窓から下を覗いているカットではお料理研の副部長らが準備している光景があったりして、つくづく芸の細かいことです。

そして、自分の持っている薄力粉が役に立つ可能性に気付いた瞬間に声を張り上げる折木!
この光景は新鮮でした。別にこのバトルに勝つことがそのまま氷菓が売れることにはつながりませんし、そうである以上、この件に労力を使うのは省エネ主義に反するのですよね。

しかし折木が古典部を仲間、「やるべきこと」の中心に考えているなら、それは省エネ主義に反しません。摩耶花がピンチに陥っている。このままでは一品も作れなくて失格……。こんなイベントでも不完全燃焼なんだろ~そうなんだろ~では悔しさはどれほどのものになるのか。
折木が自分を古典部の一員だと思っていて、そしてこのバトルを古典部全体の戦いだと考えるなら、摩耶花を助けることは「やるべきこと」。

そして大声で里志を呼ばわるのでした。
といっても本当に全力で声を張っているわけではないのが面白いです。中村悠一の演技力が光ります。
しかし慣れないことをしたというのに、古典部優勝の報を聞いて「疲れた」と首を反らす折木はどこか満足げでした。


漫研での論争はお預け

結局『夕べには骸に』を持ってこられなかった摩耶花、どんな罵倒やら攻撃やらをされるのかとビクビクしていましたが(不謹慎ですが可愛い)、河内先輩はポスターを手伝ってと言っただけでした。

しかし論争が終結したわけではなく、河内先輩がややこしい漫画のタイトルを覚えていたということで、伏線はしっかり残していきましたね。次回以降、第2Rがあるかどうかは分かりませんが、お話は続いていくのでしょう。

そのポスター制作すら見世物にして見物客を呼び込む部長の手腕に舌を巻いてしまうところですが、これ、ちょっと分かりにくい描写になっていますね。部長の書いたアオリに「vs」なんてあるものだから摩耶花と河内先輩がポスター制作で勝負しているように見えるけど、これは原作では摩耶花が線画を担当して河内先輩が塗りを担当する、という共同作業でした。もしかしたらアニメではバトルということになっているのかな、とも思ったけどよく見返してみるとちゃんとその通りで、河内先輩の周りにだけ絵の具がありました。

前回はあんな論争を繰り広げておいて、今回は共同作業。
どういう風が吹いたかは分かりませんが、前回こそ虫の居所が悪かっただけなのかもしれない、なんて思えるくらい普通の光景でした。里志が覗いていましたが、摩耶花と一緒に作業している漫研部員を見て、まさか仲が悪いとは思わないでしょう。


今回の謎:妙な怪盗

最近「海藤」とばかり打っていたので、変換すると「妙な海藤」になって弱りました。どんな海藤だ。

さて、第12話の時点でアカペラ部からジュースが盗まれていましたが、どんどん盗難被害が明らかになっていき、とうとう今回、古典部のすぐそばで盗難が行われました。
謎の連続怪盗が今回の謎解きの対象ということで確定ですね。

というわけで愚者のエンドロール編の時のように情報をまとめてみたいと思ったのですが、どうもこれ、現時点でまとめてしまうと単純なのですよね。
単純すぎるので、原作既読の私がまとめてしまったら(例えネタバレに極力気を付けても)あっさりネタバレになりそうです。なので、今回に関しては本編での謎解き終了後に改めてまとめる形を取りたいと思います。

まぁ、単純とは言っても、あくまで「現時点で」ですけどね。


小ネタ:2年F組

千反田に頼まれて氷菓の委託を受け入れ、また「人へのものの頼み方」を伝授した入須が印象的でしたね。再登場が嬉しいです。

さて、今は文化祭ということで、ネタを仕込むのには絶好の機会ですね。そして京アニのこと、細かいネタをしのばせるのはお手の物です。
私の気付けた小ネタを紹介したいと思います。

前々回の記事で、古典部の部室の隣に天文部があることが判明したことを書きました。パンフレットに「カンヤ祭は昼間だっつーの。星見えないっつーの。仕方ないし、太陽系作りました」とのコメントを載せていて、あー古典部と同じく閑古鳥が鳴いているんだろうなぁ、なんて思っていましたが、なんと今回ワイルド・ファイアに出たチーム天文部に沢木口がいました。

前衛的(←だいぶオブラート)な料理を作っていて印象的でしたが、あのお転婆な先輩がずっと古典部のお隣さんにいたとは、なんとも不思議な感じがします。

そしてこれは発見した時に「うおおおおおおお」となったのですが、ワイルド・ファイアの観客席に、なんと山西みどり・鴻巣友里・瀬之上真美子がいました。
映画『万人の死角』に出演した女の子3人です。
しかもあまり友達がいなさそうな(失礼)鴻巣を真ん中にして座っていて、微笑ましいものがありました。クラスメイトである沢木口を応援に来ていたのでしょうね。

テンションの上がった私は他にもだれかいないかと探したのですが、この3人くらいでした。

あとは、今回は製菓研の子たちがいっぱい出てました。折木にトリックオアトリートしてきた2人に加え、グラウンドでマドレーヌを売っていた2人、さらには里志が総務委員の教室で田名辺先輩と話している時に外を通っていた髪飾りが可愛い2人組も恐らくそうです。たぶんこの6人はみんな別人。製菓研は可愛い子がそろっているようです。


終わりに

それでは、今回の記事は以上です。

今回の絵コンテ・演出は山田尚子、作画監督は植野千世子でした。この2人の絵作りは本当にいいですね。できれば詳しく語りたいですが、そうするといつまでも止まらなくなりそうなくらい今回の出来がよかったので、やめておきます。
また、今回は(私の確認する限り)池田晶子の復帰回でもあります。ハルヒのキャラデザで有名ですが、産休でしばらく休んでいました。

次回以降はだれが出てくるでしょうか。いつもなら公式サイトで次と次くらいの話数までは公開されているタイミングですが、今週はまだ来ていません。金曜に更新されるでしょうから、楽しみにしておきます。
せっかくなので予想しておきます。前回・今回がローテで回ってきているようなので、次回の絵コンテ・演出は坂本一也、作監は高橋博行かな。

「もす!」の感想記事です。
よろしければどうぞ。

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ここでお知らせ!
アニプレッションは、新刊『アニプレッション vol.3』を引っ提げて夏コミC82に参加予定です!
日にちは3日目の8月12日、場所は東地区“T”ブロック-25bです。

概要の発表はもう少し先になりそうですが、私は『氷菓』についての記事を寄稿します。どのような内容なのかはまだ内緒ですが、読んで損はさせないつもりです。近々発表できるかなと思います。
夏コミ3日目は、是非アニプレブースにお立ち寄り下さい。

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ではまた。