こんにちは、おはぎです。

さて2012年冬アニメ作品の一通り出揃った感がありますが、皆様はどの作品が好きでしょうか。
私は「戦姫絶唱シンフォギア」が大好きになりました。
端的に好きな理由は熱量を感じられるから、ロマンを感じられるのです。
アニメでこんなこともやってみたい、自分の想いをぶつけたいという
作り手の気概が伝わってくる作品のように感じられます。
そんな私はOP曲は毎日のように聞き、暇があれば1話を見返していました。

さてそんなシンフォギアですが、2話からはOP映像が流れるようになりました。
椛島洋介さん絵コンテによるカッコイイ映像です。



さて、このOPの中の描写で一つ気になった点がありました。
それは風鳴翼が戦っているシーンでの「破片」の描写です。
今回は「破片」の描写からあるアニメ作品との関連を探りながら
「破片」描写の魅力に迫っていきたいと思います。
 



① 風鳴翼の破片シーン

さて私が注目したいのはOPで風鳴翼が敵のノイズをぶった斬っていく後の
顔のアップを映すカットの破片の描写です。
水樹さんが「震える心 揺さぶればいい」と歌っている所です。















(こちらはOP映像の順番通りにキャプしたものです。)

上から順番に見ていくと、
画面に占める破片(=ノイズを斬って倒すと炭化するみたいです)の割合が
減少しているのがわかります。
一番上と一番下の画像を見れば、画面における破片の量の違いはわかりやすいと思います。

また個々の破片を上から追って見ていくと
大きい破片は砕かれ、小さい破片というように
破片がより小さい破片に分解されていくのもわかります。
端的にいえば、コマが進むと破片はどんどんバラバラになっています。

そして分解され小さくなっていく破片は画面から消えてしまっています。

② アールの消えちゃう破片とは

さて破片は画面上から消えましたが、
私はこの描写に「アールの消えちゃう破片」を垣間見た印象を受けました。
さて「アールの消えちゃう破片」とは何なのでしょうか?

この「アール」というのは大阪にあるアニメ作画スタジオ「アニメアール」の事です。
この「アニメアール」が作画を担当する回において、ロボットがアクションをする時に、
割れた装甲や、岩の破片が大量に飛び出す描写がよく起こるのです。
そしてこの破片は物理法則に従って重力下に落ちずに、その場で破片が小さくなりながら
画面から消えていく描写を俗に「アールの消えちゃう破片」と呼ぶのです。
この手法は「装甲騎兵ボトムズ」「星銃士ビスマルク」ぐらいから目立ち始め、
80年代のアニメアール作画回で顕著にみられる手法です。
(80年代の主な「アールの消えちゃう破片」の使い手として
毛利和昭さん、吉田徹さん、沖浦啓之さんらが挙げられるでしょう。)

この言葉自体を知ったのは私の記憶違いで無ければ、
漫画家の悠理愛さんの過去のHPだと思います。(もし違っていたらごめんなさい)

破片が大量に飛び散っては破片が小さくなりスッと一瞬に消えていく。
この描写はアニメーションとしてとてもカッコイイと思います。
また「機動武闘伝Gガンダム」の後期OPにみる嘘の魅力」でも書きましたが、
アニメは現実の物理法則に捉われない「嘘」の描写が魅力的で面白いという観点からも
物理法則を無視した「アニメアール」の破片の作画は嘘の魅力に溢れています。

私はこのシンフォギアのOP、翼の周りの破片が徐々に消えていく描写に
「アールの消えちゃう破片」を見たのです。

③ 実際に「アールの消えちゃう破片」を見てみよう
~「蒼き流星レイズナー」のOPとの比較


さて実際にシンフォギアのOPと比較する意味で
「アニメアール」の「アールの消えちゃう破片」を見てみたいと思います。
ここで取り上げる作品は「アールの消えちゃう破片」満載の
1985年に放映された「蒼き流星レイズナー」のOPです。










このOPは当時アニメアールに在籍していた
毛利和昭さん(最近では「境界線上のホライゾン」のOPの原画も参加)と
貴市芙美子さんが手掛けています。

このシーンは主役機のレイズナーがレーザードライフル(ビーム兵器)で
敵ロボットのブルグレンの脚の装甲を貫いて、
装甲の破片が飛び散っていくという描写です。

こちらも上から下と見ていくと、だんだんと破片が小さくなっていくのがわかります。
これが本家本元の「アールの消えちゃう破片」です。

④ まとめ シンフォギアに流れるアニメアールの血

さてシンフォギアとレイズナーのOP映像における破片描写の比較を行い、
「アールの消えちゃう破片」としてなぜこの両作品が比較可能になりえるか。
それは、「戦姫絶唱シンフォギア」のアクションディレクター、
そしてOPの総作画監督が光田史亮さんだからです。
この光田さんもまた「アニメアール」の出身なのです。

(またOP原画の原田大基さんもアニメアール出身です)

おそらく翼の破片のシーンは光田さんの作画修正があるのかもしれない。
そんな事を考えると「戦姫絶唱シンフォギア」のOPにも
アニメアールの血が流れている。といえるかもしれません。
両作品の破片描写に共通項を見出せる糸口にもなります。

こうした破片描写を考えるのもアニメの面白さの一つだと思います。
なぜ破片がアニメの画面内にあるのか。アニメが手(もしくはCGで)で描かれる以上
画面に「何か」があるのは何らかの理由がないと絶対に存在しません。
つまり破片は画面に必要だと考えれば、破片にも意味があるのです。
こんな風に考えていくと、面白い発見もあるかもしれません。

それでは以上です。