こんにちは、「妄想詩人の手記」のおパゲーヌスです。

2011年秋クールの新作アニメが続々と放映スタートしていますが、毎度のことながらこの時期は高揚感や期待感や不安感、あるいはスケジュール管理のツラさなんかが入り混じった、独特の雰囲気を醸し出していますよね。現時点ではまだまだ全作品が出そろっているわけではありませんが、みなさんはどんな作品に注目しているでしょうか? 期待通りの出来だった作品、期待以上だった作品、またダークホース的面白さを発揮しているものなど、早くもいろんな注目作や見どころが挙がってくることと思います。


さてそんな中で早くも今期のひとつの特徴として、「合戦アニメ」とでも呼べそうな作品が大きな存在感を放っている点が注目されるのではないでしょうか。というかズバり言ってしまえば、『真剣で私に恋しなさい!!』(まじこい)と、『境界線上のホライゾン』がやたら面白かったという話なんですがw またそこに、まだ放映が始まっていない『ラストエグザイル 銀翼のファム』や、『ガンダム』の新作なんかも加えて、「今期は戦争を扱ったアニメが多い?」という印象は確かにあるように思います。まぁ戦争を扱った、などと言うと大いに語弊がありそうなラインナップでもあるんですが、最近のアニメでは同時期にこれだけ”いくさをする”シーンが挿入されるであろう作品が並ぶのはちょっと珍しいと思いますし、中でも合戦シーンをがっつりやってくれた『まじこい』や、群雄割拠という設定で戦略の駆け引きを楽しませてくれそうな『ホライゾン』には、とくに注目しておこうと思っています。

今回はそんな両作品が、もしがっつりと合戦や戦争を扱ってくれるならぜひ着目しておきたい点を、いくつかでっち上げてみました。半分は思いつきで始めたので不備は多いかもしれませんが、戦争を扱ってくれる作品でなかなか取り上げてくれない”燃えポイント”がどのあたりなのかを書き出してみたいと思います。

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さて戦いといえば、1対1(少数対少数)の異能力者バトルが圧倒的に多いアニメ業界。それはもちろん、幾人かのヒーローが個々に活躍するほうが圧倒的に派手だしカッコイイし感情移入もできるしニーズもあるということで、映像作品としては当然の流れではあるのですが、一方で、大人数を描く大変な労力のわりにはどうしても地味で泥臭いシーンになりがちな「合戦」は、アニメではなおざりにされてきたと言わざるを得ません。しかしここにきて、どうやら (今までよりは比較的に)がっつりと合戦や戦争を扱ってくれそうな作品がいくつも登場したということで、それらの作品がこのような扱いづらい題材をどのように料理してくれるのか、大いに楽しみなクールになるのではないかと期待しています。

私が個人的に「見たい」と思う戦争描写というのは、リアルとファンタジーの間の微妙な位置に存在しています。あまりに現実離れしていると激しく萎えるけれども、本当にリアル志向で戦争なんか描いたらきっとエンターテイメントとしては支持を得られないだろう、という妙な駆け引きを心の中で繰り広げてしまうのですね。ただの視聴者のくせにw それにそもそも、リアルの戦争なんて知らない自分には、所詮は本や映像の中の、虚構としての戦争を面白がっているだけな ので、アニメで戦争や合戦を描いてくれるなら自分の燃えポイントを的確に押さえたものであってほしいと願ってしまうのは当然でしょう。そのうえでいくつか願望を箇条書きしてみると、

○戦術面について

・大人数同士の戦いであること(モブ兵卒がたくさん登場すること)

・ヒーローユニットがあまり人間離れしすぎないこと

・地形や位置取り等、戦場の状況を明示

・両軍の作戦概要の明示と、その推移を描写

・伏兵は多用しすぎない。また奇襲の効果を大げさに描きすぎない

・生死を賭して戦っていること


○戦略面について

・戦争の目的や勝利条件を明示

・軍勢(もしくは国家や勢力)の置かれた状況や制約をできるだけ提示し、そのなかで納得のいく選択が行われていること

・ひとつの戦闘を企図したとき、「なぜそこで戦わなければならないか」が分かりやすく描かれていること

・一発逆転の戦略兵器は使わない。もしくはその使用条件が大幅に制約されていること

・主人公側はもちろん、敵側の作戦や試行錯誤も描かれていること。両者とも本気で戦っていること


といったあたりでしょうか。いま漠然と考えながら挙げたので、もうちょっと整理したほうが良かったかもしれませんw

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少し具体的に見ていきたいと思います。まず戦術面ですが、

・大人数同士の戦いであること
・ヒーローユニットがあまり人間離れしすぎない

これは基本中の基本。けれどもなかなか実現しない要素でもありますw  戦争をやっていると謳いながらも、主人公チームの搭乗する一部兵器だけしか戦っていなかったり、モブ兵卒が何百人集まっても勝てないようなスーパーユニットが大暴れしてしまったり。怪獣映画が見たいんじゃないんダゾw あ、怪獣で思い出したけれど、敵方が意思疎通のきかない謎な生命体だったりすると、いく ら大人数同士の戦いでも萎えますね。「敵側の作戦や試行錯誤も描かれていること」の項目にも絡んでくることですが。

ただしメインキャラクターが普通の人間程度の強さしかないと、あまりアニメ的には盛り上がらないのは事実ですから、このへんのさじ加減は大事ですね。あくまでその作品世界の中における基準として、一人だけ飛びぬけて強いキャラが無双するのは好きではないという感じでしょうか。ロボット物のパラメーターインフレは、ほどほどにw 


それ以上に重要なのが、

・地形や位置取り等、戦場の状況を明示
・両軍の作戦概要の明示と、その推移を描写

この二つの要素。スポーツものでも試合前の練習や作戦描写が必須であるように、合戦だって、どうやって相手の軍勢を打ち破るかという作戦が、エンターテイメントとしても要となってくる要素になります。戦場がどういう地形だからそこにどんな風に布陣して、誰々の部隊をどこに投入して、どのタイミングでどんな兵種を使い、援軍はどっちから来て、最終的にどんなカタチに持って行って勝利を収めるか。大軍勢のぶつかり合いにおいては、指揮官や各武将の能力を示し、軍としてのチームワークが試される、最高に面白い要素です。これを最大限に楽しむためには、実際に軍勢同士がぶつかり合った時ではなく、まだ敵と接触していない段階で、どんな作戦を立てているかをある程度まで描いておかなければなりません。そのうえで、その作戦通りに行くかどうか、また相手の妨害や不運な事故をどう乗り切っていくのか、スリリングな駆け引きを楽しめるわけですね。なので、視聴者にも知らせないまま行われる作戦というのももちろんあっていいんですが、基本的には、事前に作戦計画が示されたうえで戦うのが原則となっていて欲しいです。野球で言えば打順や守備位置を事前に示しておくのと同じですね。


またそれに関連して、

・伏兵は多用しすぎない

という要素も重要になってきます。そりゃあ、天才軍師が意表を突く作戦で勝利を収めるのも面白いんですが、千変万化の流れの中にある戦場でまるで後出しジャンケンのような奇襲ばかりが描かれるのは、全然面白くないと思うのです。たまにでいいんですね、そういうのはw さらに言えば、伏兵による奇襲が常に大成功しちゃう状況は、おそらく三国志あたりの影響だと思うのですが、あれはおかしいですよね。伏兵を使った方が勝ち、というか、伏兵を使わずに”鮮やかな 戦術的勝利”を描くことができないというか。伏兵というのは本来イチかバチかの作戦であるはずで、巧妙に兵を伏せるのが難しいだけでなく、発覚したら伏兵に置いた部隊は甚大な被害を出すという点で、かなりリスキーな手法でしょう。またいかにも伏兵を配置できそうな森林地帯で、敵が完全にノーマークというのもおかしな話。またひどい場合は、「お前そんなおっきな兵器をどこに隠してたんだよ!?」って笑ってしまいたくなるような奇襲作戦が描かれたりもして、このあたりは日本における戦術描写の課題かなぁと思っています。奇襲というのはあくまで”奇”なのであって、正攻法がまずしっかりと行われて初めて効果をもってくる戦術。逆に、何もない平原で両陣営が真っ向からぶつかり合っているのに、まるで伏兵による奇襲が成功したかのような効果を戦場に及ぼす見事な作戦を、歴史上の偉大な将軍のパロディでも全然いいので、描いて欲しいですね。


一方でこれはわりとちゃんとやってる作品が多いのですが、

・生死を賭して戦っていること

これがやっぱり大事ですね、実際に死ぬかどうかはともかくとして。だって、どんなに攻撃を喰らっても致命傷を負わない戦いなんて、どうやって燃えればいいのでしょう。とくに主人公機体の装甲があまりに固すぎて全然痛そうに見えないというのは、戦いどころか喧嘩にすらなっていません。誰がいつ死んでもおかしくない状況こそが、作り物の戦場に少しでも本物の熱狂を注入する、ほぼ唯一の方法だと思います。

あるいは設定上、殺し合いを行わない合戦というのもありますね。『まじこい』がまさにソレでしたが。それはそれでいいんですが、そうしたある意味で生ぬる い状況を設定したなら、生命に代わる何かを賭けて戦って欲しいところですね。一番手っ取り早いのは、名誉でしょうか。ようは、”負けられない戦い”をちゃんと描けているかという点がとても大事だというのは、他のバトルものやスポーツものと同じです。『まじこい』第一話はそういう意味では、主人公が想い人への告白の権利を賭けて戦っていたという、じつに青春らしい面白さを持ってきた巧いやり方だったなぁと感心していました。

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次は戦略面についてです。

・戦争の目的や勝利条件を明示

これはまぁいいでしょう。多くの作品において、そこで描かれるドラマに応じたスケールで、どうして戦っているのか、どうすれば勝敗が決まるのかが、分かりやすく提示されています。問題は次。


・軍勢(もしくは国家や勢力)の置かれた状況や制約をできるだけ提示し、そのなかで納得のいく選択が行われていること
・ひとつの戦闘を企図したとき、「なぜそこで戦わなければならないか」が分かりやすく描かれていること

これは、戦術描写における作戦と相通じる要素なのですが、ひとつの戦場を左右する部分だけでなく、戦争全体の推移においても、地勢や政治、技術的制約や思想等の諸事情に基づいて、できれば両陣営の戦略が、ちゃんと描かれて欲しいところです。それも、まるでとってつけたかのように語られるのでは不十分で、作品の根底にしっかりと戦争の状況が設定されており、その設定に視聴者が何らかのカタチでアクセスできるような描写がなされていなければ、いくら主人公たちがカッコイイ活躍をしてみせたところで、その価値は半減します。まず戦争の目的があり、次に国家や軍団としての戦略が示され、それに基づいて次の戦場が決定されることで、これから描かれる決戦の意義が分かり、 戦場に赴くキャラクターたちへの感情移入が自然と促されるようになる。ここが描かれていなければ、どんなに壮絶な戦いが描かれていたとしても、それは単なるプロレスと同じです。プロレスが悪いとは言わないですが、なにも戦争を扱う作品でやらなくてもいいと思うw 『ホライゾン』にはこのあたり、大いに期待 しています。


・一発逆転の戦略兵器は使わない。もしくはその使用条件が大幅に制約されていること

核兵器というものが発明されてしまってからというもの、とくに現代や未来を扱った戦争ものでは、この戦略兵器をどう規制するかという点を作り手側も苦心していると思います。最前線で活躍する主人公たちの努力を一瞬で掻き消してしまうのですから、そりゃあつまらないですよねw

しかしSFやファンタジーなどでは、往々にして、ドラマを盛り上げなければならない後半に入ってから、一度に形勢をひっくり返してしまう超兵器に頼ってしまう傾向があるように思えます。見てくれは派手だし、最後まで気の休まらない状況を生み出すのにはもってこいの手法だというのは分かるのですが。でもやっ ぱり、これまで何十話と積み重ねてきたドラマを一瞬で無に帰してしまうような印象があって、好きにはなれません。その可能性が示されてしまっただけで、自分は萎えます。

もちろん、そんな兵器を持ち出すのはたいていは敵側なので、主人公たちが最後に最大の障害を乗り越えて勝利を収めるというシチュは確かに面白い。けれどもそこで問題にしたいのは、敵側の態度ですね。もうあと一歩のところまで追いつめられているのに、切り札があるからって余裕綽々な敵の首領の態度。ひとつの様式美と言えなくもないですが、これでは、お互いに死力を尽くしてこそ体感できる戦争の興奮を冷まされてしまいませんか。同じ切り札を使うにしても、成功するかどうかが心配でハラハラしたり、なんとか一発逆転を成し遂げようと四苦八苦する姿が描かれたほうが、血の通ったライバルとしてずっと魅力的ですし、何よりちゃんと戦ってるという印象がありますね。

でもやっぱり、一発逆転というのは、型破りの超兵器を持ち出して物理的に問答無用の逆転を狙うのではなく、あくまでいままでと同じ土俵の上で、知恵と努力と根性のすべてを絞り切って逆転の方途を模索してくれたほうが、ずっと面白いと思うのです。そう、やはり戦争エンターテイメントの基本であり醍醐味というのは、

・主人公側はもちろん、敵側の作戦や試行錯誤も描かれていること。両者とも本気で戦っていること

この点に集約されてくるのではないでしょうか。実際に拳と拳で殴り合っているキャラクターが、あの手この手で試行錯誤しながら本気で戦っているのを描くのは、ほとんどの作品で成功しています。しかし戦争の全局面でそれが出来ていて欲しいですし、そこにこそ戦場ならではのドラマが生まれるものと思います。

戦争もので、両陣営が本気を出して戦うところを描こうと思ったら、個々の戦いにおけるメインキャラクターの活躍さえ描けば良いなどということには決してならないはずです。1対1のバトルにおいてさえ、そのバトルに至るまでにはたくさんのドラマが、キャラクターの夢や決意や努力や作戦が必ず描かれます。それと同じことを、大人数同士の合戦・戦争においてもやって欲しいという、ただそれだけのことを求めているのです。

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本当であればここで、過去のどの作品がうまかったかとか、どの作品がどんな失敗をしていたかとか、そうした考察もしてみたいのですが、今回はすでに書きすぎたので、それはまたの機会にしたいと思います。とりあえずは、戦術的な描写の多そうな『まじこい』と、戦略的な描写の多そうな『ホライゾン』には、上記の点に留意しながら楽しみに鑑賞していきたいと思っています。

また今回挙げた諸々の点について、すべてを完璧にこなして欲しいと言うわけではさすがにありません。作品の方向性やボリュームの如何によって、厳しく評価 したり、逆に妥協して目をつむる場合など、当然出てくると思います。またあまりいちゃもんをつけて面白いアニメを面白がらずに見てしまうのは非常にもったいないですからね。「こういうことは基本アニメではやってくれない」という前提で、加点方式で見ていくのが、精神上もよろしいかと思いますw

それでも、いつか「こういうのが見たかったんだよ!!」と叫ばせてくれる合戦アニメが登場することを、つい夢見てしまいますけどね。今期アニメ、大いに期待していますよ。


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それでは、今回はこれにて以上です。