今回、サイとさんと合同で記事を書かせていただきました「かてぽん」と申します。
初めての方は、以後お見知りおきを。


今夏季より放送開始したアニメ作品、
「神様のメモ帳」「神様ドォルズ」「猫神やおよろず」
何故この3作品が揃って夏季アニメとして放送されたのか、少し考えを巡らせてみました。


1.異なる神の描き方

まず3作品の共通点として、見てお分かりのようにタイトルに「神」が入っている点が挙げられますが、3作品すべてに「死者への想い」というテーマがあるように見受けられます。

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項目A

神様のメモ帳では、主人公アリスが「自分は死者の代弁者」だと口にし、死者に対して意味のある仕事がなせる職業・探偵として、死者の名誉を守るべく事件の真相を暴いていきます。
そこには死者を敬う気持ちがあるように思います。

神様ドォルズでは、キャラクターがとある女性の死をきっかけに人生が変わってしまい、囚われてしまっているという表現がありました。

猫神やおよろずの柚子もまた、失った両親の死を背負うキャラクターでした。両親の意思を継ぐべく、両親が残してくれたものを守るべく強くあろうとし、自ら骨董の道へ足を踏み出します。

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以上のように、3作品とも死者への想いが込められている作品だと思うのです。
また、この「死者への想い」について、神を通すことで意味が変わってきます。
それぞれ作品の神の描かれ方についても言及しましょう。

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項目B

神メモでは描かれぬ神。
神が作中に登場せず、運命と言い換えられる存在として描かれます。
現実社会における神の在り方と同じと考えられますね。

神ドルでは選ばれる神。
選ばれた者だけが所有を許される力の象徴として神が描かれます。
ガンダムやエヴァンゲリオンと似たポジションにいますね。

猫神では一緒にいる神。
私たち人間の隣人として普遍的に存在している神として描かれます。
人間より長い時を生きるために終わらない日常としての側面が強くなりますね。

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作品によって神の描かれ方が変わってくることがわかります。
項目Aでは人間の在り方で、項目Bでは(人間から見た)神の描かれ方について述べました。
これらを踏まえて作品がどのように描かれているか考えます。


2.神神神アニメから見た拡張現実

神の描かれ方と死者への想いは人間を通して考えられるものです。
それぞれ作品によって人間の在り方はどのように変わってくるでしょうか。それぞれの関係性について述べていきます。


神メモでの人間の在り方は私たちの住む現実と同じです。
だからこそ、アリスは探偵という職業を生業としています。

この世界における人間とは私たちとそう変わらずに生きており、たまたまアリスという死者へ何か意味をなせる探偵を中心に語られるものであります。
作中で語られる神が私たちの住む現実と同じ不可視であるがために、登場人物たちもより現実的に行動をするのだと思われます。


神ドルでの人間の在り方は二通りあります。
神の力である案山子を持つ人間とそうでない人間です。
案山子は力の象徴になります。

神ドルにおいては案山子を持たない主人公は案山子を持つ人間を育てたりアドバイスをしたり説得したり案山子を持つ人間として否定はしないものの、案山子を相手より有利に立つための道具として利用することには否定する人間として描かれます。


猫神は人間と神がほぼ同等の存在として描かれ、両者とも人が死にゆくのは見守ることしか出来ません。人間の隣人として、しかし人間より長く生きる存在として神はいます。

空気系作品は“終わらない日常”を描くものですが、今作には死者という存在が“終わらない日常”はないことを証明しており、何度も回想によって死者の存在を強く主張していました。
だからこそ柚子は両親の意思を引き継ごうとしているわけです。

しかし神という存在だけは“終わらない日常”を(人間視点からでは長寿であるため)内包しているキャラクターとして描かれます。
本作のOP曲は、神という存在がまるで空気のようにすぐそばにいることを歌ったもので、空気系作品にはぴったりだと思います。

参考 神サマといっしょ 歌詞タイム
http://www.kasi-time.com/item-54880.html




高い制作費を使うアニメの多くは、より流行へフィットするように時代を反映して原作を選びます。
最近の流行ジャンルは“終わらない日常”や“ループもの”で、どれも再生の物語となります。
しかし、そうした再生は主人公の柚子から見ると外部の話になります。

猫神では死者という存在が別れがあることを想像させるため、出会いから今までを大切に感じるようになり、いっそう“終わらない日常”の大切さを身に染みさせる物語として描かれていました。

猫神では柚子が“終わらない日常”を外部から眺める存在として描かれているので、“終わらない日常”を描いた『けいおん!』や『イカ娘』が放送された後のこのタイミングでのアニメ化は時代に合っていると言えます。

また、最近では『夏目友人帳』『青の祓魔師』『ぬらりひょんの孫』など妖怪をテーマにした作品があり、妖怪ブームでもあると言えます。


ロボアニメの時代背景について言えば、ロボアニメはこれまで未熟な子供が力を得るために描かれて来たものでした。
これは、未熟な子供が男性性(大人)を手に入れる、という意味で、多くの作品がなにか一つの強いもの、を目指してロボアニメを制作していた背景があります。

ちょうどその背景を現実でものにしようとしたのがオウム真理教の麻原彰晃でした。
これが失敗してロボアニメは減少していきます。
ロボ(=大人=なにか一つの強いもの)が必要とされない時代へと突入していきます。

そして、ゼロ年代は迷走し、この神ドルにおいては主人公・匡平が案山子(男性性=大人=ロボ=なにか一つの強いもの)を持たない、というキャラクターで描かれた作品がアニメ化されることはそうした時代背景があったからではないかと思われます。

同じく、今年大ヒットを飛ばした『魔法少女まどか☆マギカ』においても主人公・まどかは魔法少女という力を持たない主人公として延々と描かれ、大人という仮の姿を使わずに着実に大人へと成長する過程が描かれて行きました。

ロボットや魔法によって他人より優位になれる力を得た過去の登場人物たちを描く作品のカウンターとして『神様ドォルズ』はこのタイミングでアニメ化されたのだと思います。




同じく神をタイトルに持つ作品がこの世に出回った時期を比べてみますと、すべて2007年前半になります。

 神様のメモ帳:2007年1月(電撃文庫刊)
 神様ドォルズ:2007年1月(サンデーGX連載開始)
 猫神やおよろず:2007年6月(チャンピオンREDいちごvol.2)

三作品に関係していそうな出来事や作品を挙げてみましょう。

 2004年:
  映画『世界の中心で、愛をさけぶ』純愛ブーム
  ゲーム『ひぐらしのなく頃に 暇潰し編』ひぐらし人気急上昇
  アニメ『魔法少女リリカルなのは』『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』放送

 2005年:
  アニメ『Air』『かみちゅ!』放送 『SHUFFLE!』空鍋事件とヤンデレが注目を浴びる

 2006年:
  アニメ『かしまし』あのね商法『涼宮ハルヒの憂鬱』大ヒット
  社会現象『ZEGAPAIN』1ゼーガ『夜明け前より瑠璃色な』キャベツ
  この年からアニメの放送数が格段と増えていく

 2007年:
  アニメ『らき☆すた』放送により聖地巡礼ブーム
  『School Days』nice boat.『新世紀エヴァンゲリオン序』放映

『神様のメモ帳』『神様ドォルズ』は連載を予定した作品で、こうした社会の出来事にも目を向ける部分はあったと思いますが、『猫神やおよろず』は連載誌の隔月発売と方向性の関係で社会の出来事を反映しやすい位置にはいませんでした。

いや、『猫神やおよろず』は社会の出来事を反映しにくい位置にあったからこそ、オタク向けの空気感だけを抽出してこのような作品を作っていたのだと思われます。
空気系アニメの原作となりやすい四コマ漫画も四コマ漫画独特の制約としてストーリーを描きづらく、空気感などパッと見て分かることを全面に押し出して作られます。


三作品が同じ2007年の作品が2011年の夏にアニメ化されたのは、それぞれ趣が違えど同じ歩んできた歴史が同じものだったからなのでしょう。
三作品ともに歩んできた歴史を描いた作品だったのかもしれません。



3.ゴッドの条件 神神神アニメを巡礼する想像力

どんな作品でも歩んできた歴史を描くものだと思います。
タイトルに神が含まれていることに何の関係性もないでしょう。
ただ、それが神でなくとも、人間の外に何かがあるのでは、と考える作品です。

『らき☆すた』『けいおん!』などと空気系作品が登場した時は外部が描かれないことに重きが置かれていたように思いましたが、徐々に描かれぬ外部ですら包括していくような印象を神をめぐりながら感じました。

内部と外部が直結するセカイ系と外部が描かれない空気系とブームが去って、今はそのブームの中間点を描く努力が繰り広げられているように感じます。
それが拡張現実感なのかもしれません。


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参考文献
『リトル・ピープルの時代』著/宇野常寛
『現代視覚文化研究 vol.4』ゲームラボ特別編集

参考サイト
チャンピオンREDいちご 編集ブログ
http://www.akitashoten.co.jp/CGI/newred/newred_notice.cgi?page=18
神サマといっしょ 歌詞タイム
http://www.kasi-time.com/item-54880.html