1.はじめに
こんにちわ、柚木です。2011年冬季に放送されていたアニメ『魔法少女 まどか★マギカ』であるが、ユリイカの2011年11月臨時増刊号では本作品の特集が組まれているなど、放送終了後にも話題が衰えることなく盛り上がりをみせるアニメの1つではないだろうか。
本作品は、今まで指摘なされていた半永久的に反復された世界や繰り返しということが第10話において語られ明らかになったと思う。だが、そのことを踏まえ第1話に振り返ってみるとそのことがすでに提示されていたかのようなのである。そこで今回は、第1話から第10話で明かされた事実について触れていきたいと思う。
2.人生は廻る輪のように-永遠の迷路
まずはじめに繰り返された世界ということに触れていきたいのだが、第1話において螺旋状に広がる白黒の階段が映し出されるカットがあった。
そもそも螺旋とは、
「シンボルとしては迷路と関係つけられることもある。やはり仮説の域を出ないが、迷路は「苦難の道への進入とそこからも脱出」という象徴的意味をもち、「死して成れ」(死と再生)の観念とも結びついている点では興味深い(*1)」ということが言われている。
このように、螺旋とは死と再生を象徴するものであることからも『魔法少女
まどか★マギカ』の魔女になり死を迎えてしまいながらも、ほむらの能力により時間を遡ることで再生され世界が半永久的に反復されたということを第1話の段階で提示していたのように思われる。それに、ほむらが「永遠の迷路に閉じ込められても構わない」というセリフを発していたが、この迷路も螺旋と関係性を有するというのは面白いものがあるのではないだろうか。
また、第1話に映し出されている螺旋階段であるがこれは単色で描かれているのではなく、白と黒で構成されている。もちろん、白にも
「ヒンズー教では、白は喪の色であり、未亡人は夫を失ったことを白色の服で表わす(*2)」ということが言われており、白とは死を暗示させる色であるのかもしれない。しかし、夜明けの白光のように物事の始まり、すなわち生を象徴していると考えると、白と黒の構成は死と再生を暗示させるものがように思われる。
そして、まどかと母の詢子が鏡に向かって歯を磨いているカットがあったと思う。だが、あわせ鏡に不自然に映し出されたまどかを見てみると、実体を含めることにはなってしまうが4人のまどかが映し出されているのである。
10話において今まで4度の世界を繰り返しているということが明らかになったが、まさにこのことを暗示させていたと見ることもできるのではないだろうか。
さらに、OPにおいてまどかの家族4人が揃いまどかがタツヤを抱きあげ蝶を取らせよとしていたり、第2話において結界内に存在していた薔薇園の魔女など蝶が映し出されることが多々あった。
そこで蝶とは、
「さなぎから羽化するように、役目を終えた肉体からなにかがぬけだし、さらに長い長いいのちの旅をつづける。存在するのは物質としての肉体の死だけであり、いのちの終焉としての死は存在しない。そう気がついたとき、人は大いなる安心の境地にいたり、つぎの段階へと成長をとげる。蝶の羽化のように……。(*3)」
といったことも言われている。
このように、蝶へと羽化していく過程がつぎの段階へと続く長い命の旅を象徴するかのような記述を踏まえると、蝶を用いることで間接的に繰り返された世界ということを表現していたと考えることもできそうである。
3.リボンどっちかな?-見捨てられた黄色いリボン
第10話において、まどかとマミは繰り返された世界の中でチームを組んでいたようなのですが、最終的に魔法少女は魔女になってしまうという運命を知るとマミは狂乱してしまったわけなのであるが、それをおさえるためにまどかはマミのことを自らの武器で撃ってしまったのである。
そこで第1話に振り返ってみたいのであるが、まどかは赤いリボンと黄色いリボンを有しており、詢子にどちらが相応しいのかと尋ねているカットがあったと思う。そこでは最終的には赤いリボンを選択し黄色いリボンを見捨ててしまうのである。
このようにリボンを選択しているシーンを見てみても、何か第10話においてまどかがマミのことを撃ってしまったということと関連性を有しているかのようでとても興味深いものがあるのではないだろうか。
4.結語
第10話で明かされた事実について第1話から振り返ることを試みてみたが、いろいろと関連性を有する部分があったのではないだろうか。細かく触れはしなかったものの上述したもの以外にも興味深いものがある。
たとえば、父の知久が詢子に対してコーヒーをお代わりすのかと尋ねることがあったと思うが、その際に時間を確認するために映し出された時計がとても興味深い。というのも、時計とは1~12まであるわけだが、これは『魔法少女 まどか★マギカ』の話数と一致するものがある。それに、1から12まで色どりがなされているわけだが物語の話数とその展開とが一致するかのようなのである(*4)。
では最後に、とらのあなにおいて委託販売中(http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0020/02/78/040020027856.html )の『アニプレッションvol.2』においても、『魔法少女まどか★マギカ』について言及している論考がございます。より具体的な検討は、そちらを参照して頂けますと幸いです。
・『魔法少女まどか★マギカ』『輝きのタクト』『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』を中心とした作品考察
・今年のアニメについて語る座談会、
・今年の4月~6月放映作品を中心としたクロスレビュー
以上を中心とした内容で全148Pです。
『アニプレッション! Vol.2』をお手にとって頂けるとありがたい限りでございます。それでは、よろしくお願いいたします。
それとかなり私的なことなのですが、のんたんというHNを使われている方がやはり多いので、HNを変えようかなと思ったりしています。それゆえ、以降、見たことのないHNだなと思ったら私のことだと思って下さると幸いです。
(*1) ハンス・ビーダーマン 『図説
世界シンボル事典』(八坂書房、2007年)P.473-474
(*2) マドンナ・ゴーディング 『シンボルの謎バイブル』(GAIA
BOOKS、2009年)P.391
(*3) エリザベス・キューブラー・ロス、上野圭一訳 『人生は廻る輪のように』(角川文庫、2003年)P.336
(*4) 時計の2は赤と青で彩られているが、第2話はまどか(赤)とさやか(青)が一緒になって巴マミの魔女退治に付き合う回であったように。具体的には、「『魔法少女 まどか★マギカ』について時とともに振り返る」(アニプレッション!!)を参照のこと。