こんにちは、こちらではご無沙汰しております。「妄想詩人の手記」のおパゲーヌスです。

今回は、スタジオジブリ最新作『コクリコ坂から』を見てきたので、その紹介がてら、ネタバレ無し(たぶん)で感想を書いてみようと思います。

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さて、結論から言いますと、思ってたよりずっと面白かったwww

というかむしろ、僕の好みにはかなりハマりましたね。お気に入り度では、近年のジブリ作品の中ではかなり上位にランク付けてもいいくらい。『アリエッティ』なんかもとても面白かったのですが、それとは面白さの質がまた違って、地味目ではあるんですが、画面を見ているとワクワクして自然に笑みがこぼれてくるような、そんな作品でした。

まぁ僕はそもそもからして、宮崎吾朗監督の1作目にして悪名高い『ゲド戦記』が大好きだったというのもありまして、偏見が無かった(というよりポジティブ な方向に偏見を持っていた)ので、その補正もあったかも分かりません。ですが、お世辞にもよく出来ていたとは言い難い『ゲド戦記』と比べれば、作品としてはよりスマートな仕上がりにはなっていたと評価できると思います。これは宮崎駿の意向がより強く反映されているからなのか、それとも吾朗監督の意向がうまく制限されたからなのか・・・? いや、単純に手堅くも万人受けする作品を狙ったのが大きいのかなと思っていますがw なんにせよ、より懐の広いエンターテイメント作品として成立していたとは思いますね。



ざっくばらんに表現するなら、この映画は、家族と恋を軸とした懐古調に紡がれる日常系作品、平凡でも特別な青春像を暖かく見守る、オールドファッションド・ハートフルロマンス、なんてところでしょうか。

簡単にあらすじだけ紹介しておくと――、

舞台は1963年の横浜。主人公は女学生の松崎 海(劇中では、あだ名で”メル”と呼ばれることも多いです)という子で、彼女は両親不在の中、コクリコ荘という下宿を切り盛りしながら高校へ通っています。そんな彼女が、毎朝欠かさずに港へ向けて掲げる2枚の旗「U・W旗」(安全な航行を祈る)。この旗には彼女が家族へ向けたある想いがこめられていたのですが、そんな旗と少女を、船の中から見上げる少年があったのでした。

場面は切り替わって、松崎海が通う港南高校。この高校には取り壊しが議論されているオンボロクラブハウス「カルチェラタン」があり、この男どもの巣窟と言っても良いクラブハウスの存続に青春を捧げる少年たちの中に、毎朝「U・W旗」を見上げていた少年・風間 俊がいたのでした。

この物語は、そんな松崎 海と風間 俊がひょんなきっかけから親しくなり、「カルチェラタン」取り壊し騒動に巻き込まれながらも、真摯に、そして全力で青春の日々を駆け抜けていくというものです。そこに、いまだに消えない戦争の残り香や、その中で翻弄された家族の情や友の絆が折り重なり合って、少年少女の淡い恋心とともに重層的なハーモニーを奏でてゆくのです。



この映画のオススメポイントは、やはりなんといっても、往年の横浜を中心とした美術の面白さと、その中で生き生きと描画されるキャラクターたちの息遣いでしょうか。

まず美術については、徹底してディテールにこだわったらしい街並みがまずとにかく目を引きます。『ALWAYS 三丁目の夕日』や、あるいは深夜アニメで も『花咲くいろは』などで流行中の、レトロで神秘的な日本の風景に対する愛着やこだわり。かつてこの時代に生きていた方々なら懐かしさがこみあげてくるでしょうし、一方で若い人にとってみれば驚きや興奮に満ちた世界が展開されていきます。

さらにそれと好対照を為すようにファンタジックに描かれるクラブハウスの、圧倒的な密度の高さ。強烈で、妙に生々しく、手を伸ばせば触れられるんじゃないかとか、匂いまで漂ってくるのではないかと思わせる舞台空間は、もうただそれだけで見ていて飽きないものです。『千と千尋の神隠し』の銭湯とか、あるいは『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』の学園祭準備シーンなんかを強く連想させるカオス空間。ただ少し厳しいことを言えば、(とくにセリフ回しに顕著なのですが) 表現があまりにもステレオタイプすぎるきらいがあったりして、なんだかよそよそしい空気を感じてしまった側面はありましたが。それでも、大スクリーンに展開されたこれらの描写には、画面のあちこちに目移りしながら楽しませる、十二分に発揮されたエンターテイメント性がありましたね。



一方でお話のほうはどうか。はっきりいって、厳密にストーリーを評価しようとする方には、文句を言われてもおかしくはないかもしれないwww 前述のセリフ回しだけでなくシナリオについても、どうしてもあまり質が高くないというか、ノリと絵で楽しめちゃうひと向けかなぁ。ドラマティックな展開に膨らませる要素はたくさんあったのに、それを全部がっつりやろうとするとあまりにも尺足らずになってしまうために、いくつかのストーリーラインを均等に混ぜ込んでいちおうの外郭を作り上げた感じ? なのでどうしても淡白で、アクセントが弱く分散している。映画を見終わって「よかったぁぁ!!」と感動で胸がいっぱいになるようなタイプではなく、個々のシーンをそれぞれに喜劇のように楽しみながら、2時間という尺を幸せな時間で満たしていくタイプの作品でしょうか。

ていうか、やっぱりどうしても地味で平凡なのですよねw だから、あまりにも劇的なドラマで盛り上げるのではなく、あくまで平凡などこにでもあるような青春の一幕を、美しく楽しげに(そしてちょっぴり寂しく)飾り立てて、フィルムの中に落とし込んだ物語と言えるでしょう。だから個人的にはすごくツボではあったのですが、評価が割れてもまぁ仕方ないかな、という部分はありました。

とはいえそれでも、多くの人が楽しめるように上手に作られていたとは思います。『ゲド戦記』はちょっと玄人向け?すぎたし、『アリエッティ』は全体的になんだか暗い作品だったので、日常風景の面白さを堪能しながらほっこりと幸せになれる今作は、そういう点でもやはり”エンターテイメント”だったなぁと感じました。



あとは、音楽がイイですよ! 主題歌は件の手蔦葵が歌うとても印象的な曲ですが、これ以外にも劇中にいくつもの挿入歌が登場。坂本九の「上を向いて歩こう」のほか、重要な場面でなんだかよくわからない(笑)合唱曲が登場し、作品の大きなアクセントとなっています。歌詞はちょっと分からなかったけれど、” 皆で大声で元気よく歌う”という行為に重要な意味が込められているようで、こうした演出志向は宮崎吾朗監督らしい部分なのかなと思いながら見ていました。 またBGMは、こちらはとにかく見事で、やはり比較的にレトロだったり落ち着いた(地味な)曲調のものが多いのですが、終盤のクライマックスシーンなんかは、曲のチカラで、今作の”エンターテイメントらしさ”を表現していたように感じました。そもそもこの作品は特徴的なSEと挿入歌のマッチングから劇が導入されるので、音の使い方に関してはかなりこだわってるんじゃないかなと。

また音と言えば、ジブリ映画でしばしば言われる声優の演技ですが、いちおういつものジブリ声優クオリティとはいえ、今作の場合はそれが、作風にかなりよく 溶け込んでいたんじゃないかと思います。今作に限っては、本職の声優使わないのが逆に良かったんじゃないかと思えるくらい。『コクリコ坂』公開直前に、テレビで『海がきこえる』の放送がありましたが、なるほどこのタイミングでコレを放送したのはそういうことか、という作風の近さを、画面よりもむしろ声優の演技を聞いて感じました。『海がきこえる』が好きな人は、けっこう好きになれるかもしれません。


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さて、ちょっと辛口なことを書いちゃったり、未見の人向けにここまで書いちゃっていいのかってくらいがっつり感想書いてしまいましたがw 大丈夫、ちゃんと面白いので、まだ見てない方はぜひ劇場に足を運ばれることをオススメします。

また、この映画は1963年当時の日本を知っている人に解説してもらいながら見ると、より楽しめるでしょうね。今回自分は横浜出身の母と見に行ったのですが、母はもう少し世代が下だそうで、いまいち思い出が掻き立てられなかったそうですww DVDが出たら、世代的にもストライクなハマっ子である父に見せて、いろいろ話を聞いてみようと思います。また何か面白い話があれば、どこかで語らせていただきたいですね。


それでは、ここら辺でお開きにしたいと思います。どうもありがとうございました。


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