アニメ「Angel Beats!」を題材にした、二次創作のショートストーリーです。

アニメを見てること前提に書いてますが、アニメ知らなくても読めなくはないと思うw

いちおう、「Angel Beats!」のヒロイン、天使ちゃんこと”立華かなで”を主人公にしたドラマ。かなでの生前譚を空想したものです。

生前譚なんだから何をやってもOKだろうと思って、好き勝手に妄想を膨らませて書いています。不快に思われる方は回避してください。それから、読んでも別に面白くもなんともないと思われますので、素人の痛々しい文芸に不快感を抱く方も回避してください。


無駄に長いです。前・後編になるか、前・中・後の3段構成にするかは、未定。続きは鋭意(?)制作中です。


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「病室と少女と天使の鼓動 ~another tale of angel’s heartbeat~」


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「ねぇ、天使さまは、どうしてこんなにヒドいことをするの?」

 病院の中の小さな個室で、私は母に尋ねた。

「え? なぁに?」

 婦人誌をパラパラとめくっていた母は、怪訝そうな顔をして、私の手の中にある絵本を覗き込む。それは聖書の物語で、ちょうど聖母マリアとその夫ヨセフのもとへ、天使が受胎告知にやってくる場面だった。

「マリアさまとヨセフさんは愛し合っていたんでしょう? でも二人が結婚する前に子どもを授かって、それからずうっと、ヨセフさんはマリアさまを傍(そば)で見守ることしか許されなかったなんて、天使さまのしたことはヒドいと思うわ」

「あらあら、この子ったら! そんな罰当たりなこと、言うものじゃありません」

 母は困ったような顔をしながら、私を強くたしなめた。

「でも!」

 納得できない私の口に人差し指を当てて、母は言った。

「神の御子を授かるっていうのは、それはそれは素晴らしいことなのよ。マリアさまもヨセフさまも神さまを深く愛していらっしゃったから、イエスさまを身籠ったことを喜んで受け入れたとお母さんは思うわ」

「嘘よ。最初はひどく戸惑ったけど仕方なく受け入れたって、本には書いてあるもの」

「そうかもしれないわね。でもよーく考えて最後には、受け入れることにしたんじゃないの。お二人が清く正しい心を持っていたから、天使様はお二人に使命を与えてくだすったのよ」

「そうかなぁ?」

「そうなの! はい、この話はこれでおしまいね。お母さん、そろそろお仕事に行かなくちゃだから、先生に迷惑かけないように、いい子にしてるのよ」

「ぶぅー」

 強引に話を切られたことで不満そうに膨らんだ私の頬に、母はそっとキスをしてから、ぽんぽんと頭を撫でて、病室を出て行った。

「……ぶぅ」

 もう見えなくなった母の背中を目で追って、もう一度私は頬を膨らませた。




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 神様は、不公平だ。

 まだ子どもの私だって、愛し合う夫婦がどんなことをするかくらい、知っている。そしてそれがどんなに素敵で、幸せなことかも。

 そんな幸せな日々が約束されていた人から、たとえ世界中の人々を救うためだからといって、その幸せを奪って良いものだろうか? おなじ子どもを宿すのなら、最初から結婚する気のない人か、でなければもう離婚してしまった女の人を選べばいい。

 離婚してしまった男女の仲ほど、見ていられないものはない。私がほんの小さかった頃の思い出としてかすかに記憶に残っている父と母の姿は、それはもう幸せそうな様子だった。それなのに、いつしか喧嘩ばかりするようになって、父は黙って煙草ばかりふかしているし、母は寝室に駆けこんでハンカチを噛みしめて泣きじゃくっているし。私がどうしたら良いか分からずに部屋でうずくまっているうちに、すごくあっさりと、両親は離婚してしまった。

 もしそこで母のもとに天使さまがやっていらして、あなたは神の子を宿しましたってお告げを下されたら、篤信家の母は泣いて喜んだだろうか?永遠の愛を誓った同じ十字架の前で、毎日のように涙を流しながらお祈りをし、自分の罪を悔い、一人娘の幸せを願い続けた母。彼女ならきっと、神の御子を宿す人物として神様に選ばれても、何の不思議もない。

 ……両親が離婚して1年も経たないうちに、私はひどい病に冒された。神様はほんとに不公平だ。




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 母が仕事に行ってしまってから、しばらく一人で考え事をしていると、小学校の友人がお見舞いにやってきてくれた。彼女は私の昔からの親友で、友達の少ない私にとっては、割と頻繁にお見舞いに来てくれる数少ない知人の一人だ。

「やっほー、来たよ~」

「あ、めぐみちゃん、いらっしゃい。って、ええ? どうしたのそれ、制服?」

「うん! もうすぐ卒業式じゃない? 中学の制服がもうできたから、これで出るんだ」

「へぇ~、いいなぁ」

 喜色満面で登場した友人の、ドキっとするほど大人びた容姿に、私はひどく驚かされた。それと同時に、なんだか彼女が遠く手の届かない存在になってしまったような気がして、とても寂しくなる。

「そっか、もうじき中学生になるんだね、みんな。早いなぁ。さすがに2年近く入院してると、なんだか取り残された気分になっちゃう」

「まぁねー。悪いけど一足先に卒業させてもらっちゃうから、かなでちゃんも早く退院しちゃいなよ。うまくすれば、一緒の中学に通えるんじゃない?」

「うーん、分かんない……」

「え? だってこないだ、検査の結果は良くなってるって……」

「あぁ、うん。それはそうなんだけどね。その、手術後の経過は順調なんだって。先生もお母さんも、きっと良くなるって励ましてくれてる。でもね、退院できるようになるまでに、あとどれくらいかかるかは分からないっていうか、その……無理かもしれない」

「それって、どういう……」

「はっきり聞いたわけじゃないんだけどね、わたしたぶんこのまま、病院の中から出られないで死んじゃうかもしれない。それが半年後か、一年後か、もっと先かは分からないけど」

「そんな! でもどうして? 手術は成功したんでしょう?」

「うん。だけどわたしの病気は手術でも治らないんだって。成功はしたけど、それでも、少し寿命を延ばすくらいの効果しかなくて……」

「それ、はっきりお医者さんの口から訊いたの?」

 ふるふると、私は首を横に振った。友人の顔が真剣さと怒気を含んだものになっていく。

「じゃあ、勘違いかもしれないじゃない! そんなに簡単に、死ぬとか言わないでよ!」

 私はきょとんとした。この子はいったい何をそんなにムキになっているのだろう?病気なのは私なのに。死ぬかもしれないのは私の方なのに。もちろん、私だって死にたくて死ぬわけじゃ、ない。でもそれが宿命付けられているのなら、仕方ないじゃないか。死にたくないとあがくのは辛いから、私は静かに自分の運命を受け入れたい。あぁ、当事者でもない彼女は、一日でも長く生きることが良いことだと、安易に考えているのだろうなぁ。

「そうね、ごめんごめん」

 私は、面倒ごとを避けるように、笑ってその場を取り繕うことにした。

「……」

 友人は黙っていた。私の顔色を窺うように、私に非難の意思をぶつけるように、そして私を励ますように、彼女は私をじっと見つめていた。空気が重い。沈黙を破りたくて、私は笑顔を作ってみた。

「負けちゃ、駄目だからね。絶対に良くなって、また一緒に遊ぶんだからね。信じていい?」

「……うん」

「はぁ~。頼りないっ!」

 そういって彼女は笑顔を取り戻すと、母と同じようにぽんぽんと私の頭を撫でて、立ちあがった。

「じゃあね! また来るから」




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 その晩、消灯の時間になった後、寝付けなかった私は枕元のぬいぐるみに、何とはなしに話しかけていた。

(ねぇ、 めぐみちゃんはああ言うけどさ、わたしがこうして生きてることに、どんな意味があるのかなぁ?)

 むろん、ぬいぐるみは返事はしない。そんなことは百も承知で、それでも私は、目の前の私自身に語りかける。

(だって、だってだよ? はっきり訊いたわけじゃないにしても、わたしの命がそんなに長くはもたないってことは、たぶん間違いない。それなら、今死ぬのと、半年後に死ぬのと、どんな違いがあるのかなぁ? )

(わたしの胸には全然知らない人からもらった心臓が脈打っている。これって、わたしの命を延ばすために、誰かが一人犠牲になってるってことでしょ?ううん、一人なんてものじゃない。わたしがこの手術を受けたことで、もしかしたら同じ心臓で助かったかもしれない他の患者さんが、苦しんだり死んだりしたかもしれない。心臓はひとつだから一人しか助からないっていうのは分かるけど、たくさんの可能性を犠牲にしてまで私が生き永らえてるなんて、ぞっとする……。

 それにこの心臓を埋めるために、いくらかは知らないけどすごくたくさんのお金がかかっていて、その手術の経過を見守るためにまた何カ月、何年も入院させられて、その間ずっとお母さんは仕事と、病院と、教会を行ったり来たりで。もし私が手術もせずにさっさといなくなってしまっていたら、お母さんはもっと有意義に時間を過ごせるんじゃない?)

 私はここで、先日母が語っていた、仕事の同僚という人のことを思い出した。母は私を元気づけるために自分の仕事上の頑張りを自慢げに話して聞かせてくれるのだが、その中にたびたび登場する男の人がいることに、私はとっくに気付いていた。

(ふふ、こないだ言ってた人って、もしかしてお母さんのボーイフレンドじゃないかしら?もしそうなら、私はやっぱりお母さんの人生にとってお荷物で、お母さんがまた幸せになるチャンスを邪魔してるってことよね。そういえば、お母さんとお父さんが喧嘩し始めた理由って、なんだったのかしら……)

 ぐる、ぐる、ぐる。ぼんやりと回転する私の頭は次第に陰鬱な闇の底に沈んで行き、自虐と感傷の心地よい淵の中へ、私を案内する。私はぬいぐるみをぎゅっと抱きしめ、目に涙を浮かべながら、私の人生を嘲笑し、運命を呪う言葉を並べ始める。

(あぁ神様、あなたはなんて残酷なのでしょう。お母さんはあんなにも神様のことを信じているのに、あなたはお母さんにひどい仕打ちばかり下されます。私が病気になったことは、ほんのちょっとしか恨みません。でもお母さんがつらい思いをさせられるのは、私は許しません。あんなに健康で、元気で、美人のお母さんが、どうしてやりたいことも出来ずに苦労しなければいけないのですか? その苦労の後に、ちゃんと幸せになれるというのでしょうか?とてもそんな風には思えません。)

(……今日めぐみちゃんが制服を見せびらかしに来たのは、私を悔しがらせて、病気を治そうと必死にさせるために、神様が仕組んだことでしょう?私にはそんなこと、ちゃんとお見通しなんだから。もし私が、あの制服を着るために必死になってあがいたところで、神様、あなたはきっと私の命を取りあげて、空の彼方から私を見降ろして嗤うんだわ。あなたは、なんて不公平なんだろう。めぐみちゃんはあんなに幸せそうなのに。他の人たちはあんなにも自由で、好きなように生きていられるのに。なぜだか分からないけれど、私は神様に選ばれて、病気をもらって、そうしてお母さんや他の多くの人たちの人生を縛る鎖にさせられたんだ。でも、どうして私だったのだろう?

 聖母マリア様は、きっと神様を恨んだに違いない。幸せが約束されていて、もうすぐ結婚だっていう最悪のタイミングで、望みもしない使命を背負わされたのだから。でもそれだけじゃない。私には分かるもの。マリア様は、自分の人生が狂わされたことよりも、愛する人に我慢をさせなくちゃならないことで、より一層苦しんで、神様を恨んだに違いないのよ!

 あぁ、いますぐにこの世界からいなくなってしまえたら! 誰にも迷惑をかけることなく、誰の幸せを奪うのでもなく、私自身もこれ以上苦しまなくて済むのなら、私は今すぐにでも死んでしまいたい。この、誰のものか分からない心臓を取り出して!)

 いつしか私の枕は涙でぐっしょりと濡れていた。悔しくて、切なくて、胸がかきむしられる思いがした。動悸がひどくなっていく。私は両手で強く強くぬいぐるみを抱きしめた。




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 ……病室は、暗く静かだった。ただ時折り漏れる私のすすり泣きだけが、部屋に小さく響き渡った。一人ぼっちで閉じ込められた、たいして広くもない病院の個室。これが、私の鳥かごだった。そしてこれが、私の世界のすべてだった。

 私は、夕方訪ねてくれた友人の制服姿を思い浮かべた。それは新調したばかりの初々しい輝きと、普段の服装とはまるで違う大人びた雰囲気を放っていた。まるで制服を着ることで、私の知らない新しい世界への扉が、友人の目の前に大きく開け放たれているような気がした。

 あるいは私は、彼女が以前話してくれた学校のことを思い出した。6年生にもなると、恋の話が俄然多くなった。もちろん以前から好きな男子の話をすることはよくあったけれど、この年齢になると、その話題はずっと生々しい響きを伴ってくるようになった。私が病室に閉じ込められている間に、級友たちの間に何か劇的な変化が訪れつつあるように感じたし、そこには生への強い撞着が潜んでいるようで、それが私にはあまりにも眩しかった。

 それを思って、私の目にはまた涙が溢れてきた。

(もし、私が病気なんかしなかったら……。ううん、たとえ病気だとしても、それがいつか治ったなら、私にもめぐみちゃんたちのような明るい日々がやってくるのかな。私も、みんなと一緒に修学旅行や卒業式に出て、新しい制服を買って、男の子を好きになったりするのかな。それってどんなに素敵なことだろう?私には絶対に、手に入らないのかな……?)

――その時だった。

「シアワセガ、欲シイカ?」




 体の芯から震えあがるほどの恐ろしい声で、何かが語りかけてきた。

「な、なに!?」

 私は飛び起きた。いや、正確には目を開けて上体を起こした。慌てて周囲を見渡す……が、何もいない。気のせい?いや、そんなことは絶対にない。確かに何かが、私に語りかけてきた。まるで地の底から這い出た悪魔のような声が、はっきりとこの耳に残っている。とても幻聴だとは思えなかった。あれは、確かに私のすぐ近く、ほんの目と鼻の先から話しかけられたものだ。耳元ではなく、そう、ちょうど私のあごの下、胸の中あたりから……。

「――っ! このぬいぐるみ!?」

 私ははっとして、両手に抱き抱えていたぬいぐるみを部屋の隅に強く放り投げた。床に叩きつけるつもりで投げたぬいぐるみは、まるで見当違いの方向へ飛んで、窓際の水差しを倒した。私はそんなことに構っていられず、毛布にくるまってガタガタと震えながら、ナースコールを押し続けた。

 考えられないほど長い間待たされ続けた後、ようやく看護師がやってきた。私は安堵と憤りを感じながら、枕元に顔を近づけた看護師に泣きついた。

「あらあら、どうしたの?」

 病状の悪化ではなさそうだと見て取った彼女は胸をなでおろしながら、しがみつく私を優しく抱きしめて、頭を撫でてくれた。嗚咽で言葉が出せなくなっていた私は、なんとか声を喉から振り絞って、今しがた放り投げたぬいぐるみの方を指差して叫んだ。

「捨てて! はやく捨てて!」

「捨てるって、何を?」

「悪魔がいるの! お願いはやく! 今すぐ燃やして!」

「悪魔? ――って、あのぬいぐるみが?」

 私は肯定するかわりに、いっそう強く彼女の首にしがみついた。看護師は、後からついてきた別の看護師にぬいぐるみを部屋から持ち出すよう指示すると、まるで母がしてくれるように、私をなだめて包み込んでくれた。

「……捨ててくれた?」

「ええ、捨てるように言っておいたわ。いったいどうしたの?」

「あれが突然、話しかけてきたの。とっても怖い声で……。きっと悪魔がとり憑いたんだわ! 幸せが、欲しいか?って、聞かれたの。本当よ!」私はまたガタガタと震えて泣きだした。顔から血の気が失せて、真っ青になっていたのが、自分でもよく分かった。

「よし、よし。怖い夢でも見たのね、可哀相に! しばらくお姉さんが付いていてあげるから、安心してお休みなさいな」

 そう言って彼女は私を離すと、ベッドに横たわらせた。

「夢なんかじゃ……ない……」

「うん、そうね、怖かったのね。でももう大丈夫よ。いい子だから……」

 人の温もりから離れるのは嫌だった。看護師の腕が離れることで、また悪魔がすり寄って来そうに思えた。看護師はそんな私を半ば強引に横たえて毛布をかけると、私の手をぎゅっと握りしめて、再び私に温もりを分けてくれた。あの恐ろしい声はまだどこか私の頭の中に余韻を響かせていたけれど、いつしか私は安心して、眠りの中に入っていった。




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 ぬいぐるみを患者の目のつかない所にしまいに行った看護師が、床に落ちた水差しを片づけに戻ってきた。彼女は、少女のベッドの横にたたずむ同僚に、小声で話しかけた。

「どう?」

「泣き疲れて、寝ちゃったわ」

「そっか。まぁ、発作じゃなくて良かったよ。結局、何だったんだって?」

「怖い夢を見たんだって。悪魔がぬいぐるみにとり憑いて、話しかけてきたって」

「まぁ! それは怖いわね! なんて言われたんだって?」

「何かが欲しいか? とか何とか。何よ、楽しそうじゃない。不謹慎!」

「怪談とか、大好きなもので」

「まったくもう。早く拭いちゃってよ。起こすといけないから」

「はいはい。それにしても、悪魔とはねぇ。あの母親にしてこの子あり、かな」

「――?」

「ほら、その子の母親って、宗教にはまってるらしいじゃない。毎日のように教会でお祈りしてるって。普通怖い夢って、お化けとかが出てくるものでしょう? わざわざ悪魔が登場するところに、興味をそそられるわね」

「……はぁ。あなた、噂話はたいがいになさいね。片付いたのなら、もう行くわよ」

「ちぇ、ノリが悪いんだから」

 二人の看護師は、少女が寝入っているのをもう一度確認してから、そっと病室を後にした。

「……そういえば、さっき」口が軽いほうの看護師が、部屋を出てから唐突に話しかけた。

「ん?」

「あの子のお友達が、病室で大声で話してるのが聞こえたんだけど」

「ちょっと、今度は立ち聞き? やめにしなさいってば」

「ちがうちがう! 大事な話。あの子、ひょっとして、さ」

「……うん」

「自分の死期のこと、勘付いてるんじゃないの?」

「えっ!? まさか!」

「私も良くは聞こえなかったんだけど、なんかそんなようなことを話してたよ?」

「それって……」

 一瞬、二人の間を重く冷たい空気が流れた。二人とも、少女の今置かれている状況と、これまで医者や彼女たちが励ましの言葉として患者に話してきたことの内容との差異を思い起こして、戦慄した。そして慌てて、悪い予感を断ち切るように首を大きく横に振った。

「ない、ない! そんなこと、絶対あり得ない!」

 大きな声で不安を否定してみせた看護師は、それでも後ろ髪を引かれる思いで、元の職務に戻っていった。




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続く……。