父親の職業というのは、その人がどんな職業を選ぶにしても大きく影響すると考えています。同じ職業につかなくても、父親の生き様というのは子供にも受け継がれていくと思います。それはアニメーションの監督達も同様ではないかと、彼らの情報を集めていくうちにそう考えるようになりました。今回は高畑勲、宮崎駿、富野由悠季、押井守を中心に紹介し、父親との職業の関連から監督達の作風の影響について考えていきたいと思います。
①高畑勲の場合、父は岡山県の教育長

高畑勲といえば「アルプスの少女ハイジ」「火乗りの墓」「となりの山田君」など、その日常描写を完璧主義によって行う演出により宮崎駿と共にジブリの基礎を築きあげた名演出家です。宮崎駿の思想哲学に多大な影響を与え、また作品を作る時には「高畑の理論」を基本に置いているそうです。また他にも富野由悠季や押井守の演出に影響を与えています。
そんな高畑氏。東大仏文科卒であり業界屈指のインテリです。その仕事ぶりはアニメの制作に留まりません。フランスの研究書を翻訳し、フランスのアニメ「キリクと魔女」の日本語訳を行うなど、文化人的な活動をしています。「アニメはこどもの為に作られるべき」と教育的名主張する点からも、名誉県民賞まで受賞し、県の教育長だった父親の存在は大きかったのではないでしょうか。

②宮崎駿の場合、父は飛行機関連工場の役員

もはや説明不要と言って良い宮崎駿。昨今では映画監督として扱われていますが、彼の本質はアニメーターだと思いますが、それは別の話。
彼の作品である「未来少年コナン」の「ギガント」。もしくは「天空の城ラピュタ」の「ゴリアテ」などを見ればわかりますが、彼は重度の軍事・ミリタリーマニアです。彼の作品で、軍関係の乗物・武器・軍服といったものが登場した場合、全てが喜々として描かれているのが伝わります。特に飛行機や軍隊を題材にした「紅の豚」は本人がプライベートフィルムと言ってしまうぐらい、彼の嗜好が如実に表れていると思います。
こうした彼の嗜好の土壌を形成したのは父が飛行機関連工場の役員だったからです。幼少時から飛行機や軍関係といったものが生活の一部として身近に存在していたのでしょう。本人も子供の頃から、戦車や飛行機を良く描いていたそうで、そういったモノが大好きな少年でみたいでした。その延長線上に今の仕事が成り立っているのです。

③富野由悠季の場合、父は宇宙服の製造関係の労働者

「機動戦士ガンダム」の原作者として有名ですね。ファンとしては新作の企画が現実化してほしいというのが切なる願いです。
そんな富野氏の父親は正確には、与圧服という宇宙服の一素材の専門工場勤務だったそうです。富野曰く「父親の職業上、宇宙というのが身近に感じられた」らしいです。そして身近な宇宙は憧れの対象となり、幼少時から自然科学に興味を持ち、小学校の時から宇宙について独学で勉強していたそうです。特に宇宙ロケットの発射については、雑誌を購入し勉強していたみたいです。この経験は「ガンダム」を創造しえた基礎学力になったと富野は述べています。富野にとって「ガンダム」は戦争の要素より「宇宙旅行」の方がはるかに重要だったみたいです。もし富野の父の職業が違うものであったら「ガンダム」は無かったのかもしれません。
これは僕の主観ですが、富野監督以外の「ガンダム」では宇宙空間の描き方、もしくは宇宙での生活描写に魅力が感じられないと思っています。それは他の監督が富野ほど宇宙を好きではない、宇宙について考えていないからだと思っています。

④押井守の場合、父は探偵

「攻殻機動隊」「パト2」等、「映画」というイデアを作るのが上手いと個人的に評価している押井守。また作品と同じぐらいに、蘊蓄や喋り(特に宮崎駿について)も面白いです。
彼の父の職業は探偵。といっても仕事内容は不倫の調査とかでそんなには仕事は無かったそうです。そんな父が失業中の時にはよく映画に連れて行ってもらったそうです。そのことが映画に興味を持ったキッカケとなりました。そして大学時代には年に1000本もの作品を見る映画マニアになり、そこで培った鑑賞眼が映画監督へ成功に繋がる大きな要因になったと思います。
そんな押井は「迷宮物件」という作品で、探偵を主人公にしたアニメを作っています。そして「パトレイバー劇場版1」では犯人の帆場が何をしたかったのかを紐解いていく展開は、探偵的要素を感じます。他にも「イノセンス」も含め彼の作品には、何かの事件と謎が発生し、それをミステリアスに解明していく展開が多い印象を受けます。


とまぁ4人の監督の例を妄想を交えて発表させて頂きました。私は作り手が何に影響を受けたのか、そしてその影響から何を作ったのか。こうした部分を断片的な情報を集めながら、作品を考察するのも個人的には面白いと思っています。