皆様こんにちは。
「アニメを考えるブログ」のuhdです。
執筆者に名を連ねておきながらなかなか寄稿には至らなかったのですが、
すっかり遅れた形になった今、ようやく拙稿を掲載することができました。
相変わらずの拙文でありますが、お付き合い下さればこれほど嬉しいことはありません。


まず、1つ目の寄稿は「アニメで人生を考える・前編」です。
アニメからは人生について考えることができるのであるということと、
作品から人生を感じて欲しいということを中心的なテーマとしております。
具体的な作品として「けいおん!!」と「Angel Beats!」を取り上げています。
「前編」の今回は主に「けいおん!!」の話になります。
私の至らなさのために若干趣旨どおりの文章とはなりませんでしたが、
お読み頂ければ幸いです。コメントもお待ちしております。

なお、本稿にあたっては、文調をいつものブログとことなる「である調」にいたしました。
今後も、当ブログに寄稿する際はこの文調でいきたいと思います。

「アニメで人生を考える・前編」

 

「CLANNADは人生」というネット上でよく知られた言葉がある。実のところこの言葉がどういう意味を持っているのかがはっきりとしないところはあるが、私は、「CLANNAD」の、特に2期を観てその言葉が的を射ていることを強く感じた。確かに、この作品には人生を感じさせるものがあると思った。

 

こういった「人生」を感じさせる作品においては、それをただ漫然と観ていることは非常にもったいないと感じる。そこに人生が描かれていることを感じ、そして自分の人生と並べるように考えることが有用なのではないだろうか。アニメの鑑賞をそこだけに留めるのではなく、自分の人生、生活に考えを反映させることで、より深くアニメを観ることができ、かつそれを実生活に活かすことができるのだと思う。

 

そして、何も人生を感じさせるのは「CLANNAD」に限ったことではなく、「けいおん!!」と「Angel Beats!」にもそれを強く感じさせるものがある。この2つの作品についても、視聴者にはいろいろと人生について考えて欲しいと思う。この記事ではまず前編として「けいおん!!」を取り上げ、早いところでは明日に最終回が迫った「Angel Beats!」は、その最終回を終えてから後編として取り上げたいと思う。

 

「けいおん!!」は、1期では高校生の部活動という部分に強く焦点を当てたものだった。2期でも同じように描かれている部分はあるが、1期と異なるのは唯たちの部活動には終わりがあるという部分が非常に強く示されているところである。

 

私も当初は1期と同じように「部活動」というものを中心にした作品なのだろうと観ていたが、今思い返すと実は1話のころから「卒業」を意識させる言動は出て来ていた。

「あなたたち、1年って短いわよ~」(さわちゃん先生)

1話で出てきたこのセリフこそまさに、この「部活動」が永遠のものではなく、いずれは終りが来るものとして描かれていることの証左であろう。その後も次々と「卒業」及び「卒業後の進路」を意識させる話が続けられている(拙稿ながら私のブログの各話感想参照)のが、この作品のここまでの展開である。(未だ作品の終わらない段階で方向性を確定付けるには少々臆するところもあるが、ひとまずここまでの展開はこれで間違っていないと思う。)

 

さて、この作品の流れを簡単に述べたのであるが、この1,2年生時代が描かれた1期においては先も考えずに部活動に集中し、3年生たる2期においては「卒業」及び「卒業後の進路」が意識させられるというのは、まさしく現代を生きる高校生をそのままに描写したものである。もちろん、高校生活の過ごし方は人それぞれでありそのままぴったり万人に当てはまるということにはならないだろうが(実際筆者も異なる生活を送っていた)、しかし、これが現代の高校生活の1つを象徴的に代表していることは間違いないはずである。

 

高1、高2のころは、高校生活の間でしかできないものにのめり込むことが良いこともある。将来への不安とか打算とか、そういったものを一切かなぐり捨てて、今自分のやりたいことだけを視野に入れて、それに一生懸命にのめり込む。それこそが、自分の人生全体の中で、最も素晴らしい時間となりうることである。

 

そうは言っても、高3のころになればそれに完全集中とはいかなくなる。同じように日々を過ごしているつもりでも、どこかで卒業後のことを考えなければならない場面というものがちらほら出てくる。今ののめり込んでいるもの(作中ではこれがけいおん部なわけだが)がいつまでも続くとばかり思ってはいられない。それが高3というものなのである(思えば2期の第1話のタイトルが「高3!」であったというのは、まさにこれから「高3」としての生活が始まるのだということを強調した、実に示唆的なものである)。

 

もう少し、「けいおん!!」の具体的な描写を取り上げてみよう。

 

例えば4話の修学旅行。おそらく殆どの人にとって高校生活最大のイベントであり、その楽しさに何もかも忘れてしまいそうだ。そうでありながら、澪・紬が絵馬に書いたのは「志望校合格」。何かお願い事をするときには、修学旅行中でもこれが真っ先に浮かんでしまう。もちろんそうでないやつ(唯・律)もいるのが、実に高3らしい。それから第7話では、先に卒業した先輩を絡めた描写を見せ、第8話はタイトルからしてずばり「進路!」。この話では「ずっと先のことだから想像できない」という唯が、進路希望を提出するのに四苦八苦する。

 

このあたりは実に進路に頭を悩ませる高3らしい。筆者は高1の時から志望が一貫していたので頭を悩ませることはなかったが、高1、高2の時に何も考えていないと高3のときにはこういう状態に陥ってしまうのである。さらには、例え高1の時から日々自分の進路について頭を悩ませていたとしても、3年間という月日は短く、なかなか進路が決まってくれない人もいる。

 

ここの部分は非常にリアリスティックなのである。したがって今現在高2以下の方は、折角この唯たちの様子を観ているのであるから、それを自分の人生に当てはめて考えて欲しいと思う。自分が将来にこうなる可能性もあるのだと思いながら観ることで、アニメを自分の人生に反映させることができるはずである。ただ流し見しているだけではもったいない部分もある。

 

一方で、既に高3を終えてしまった人は、自らが送った高校生活と照らし合わせてみて欲しい。自分の人生と比較してみてほしい。そうすることで、今唯たちが何をやっているのかということが、より深く理解できるはずである。また、自分とは別の過ごし方もあったのだということ、こういう部分が違ったのだなということを感じながら見れば、自分との違いを意識することで改めて自分の今の人生に反映されるものがあると思う。

 

「卒業(後)」からちょっと離れたところでは、5話で純が友人の家に居ながら1人漫画を読みふけったり、6話で律がスカートの下にジャージをはいたり、10話で手紙のやりとりをしたり。第10話などはまるごと、高校(部活)生活というものを感じられるものだった。

 

この部分においても、実に(高校生活という)人生を描いているのだなということを感じさせるものである。これ以外にも、高校生活というものをリアルに描いているものは非常に多い。そこには人生が描かれているのであると捉え、そして自らの人生に思いを馳せることで、作品にも自分の人生にも新たな見方というものが生まれてくるのではないだろうか。

 

このように、私はこの作品を観ている者に人生を感じて欲しいのである。具体的には、自分の高校生活を頭に浮かべながら、今の子の高校生活はこんなものなのだろうかということを考えて欲しいのである。逆に、未だ高校3年生にならざるものは、自分が将来こういう生活を送りうるのだということを考えて欲しい。さらに中学生ならば、高1~高3全体にかけて想像を膨らませて欲しいのである(現在高3の人はどうすればいいかって? 受験生がアニメについて深く考えていたらそれはそれで問題もありそうだから伏せておく)。

 

そうやってこの作品に人生を感じ、自分の人生と繋げて考えることで、この作品はもっと観やすくなると思うし、さらに自分の実生活に活かすことができると思う。常々あらゆる経験を自らの糧としたいと思っているが、それはアニメにおいても同じである。

 

本当は、「けいおん!!」のどこに人生が感じられて、どのように描かれているかについて詳しく論じたかったが、そろそろ長くなりすぎてくることなのでこのあたりで筆を止めようと思う。少々抽象的で総論的な文章になってしまったが、今後もまた1クール続く本作品を観るにあたっては、この「人生」(というと大げさに過ぎるので「高校生活」「部活動」と置き換えたほうが気軽に見られるかもしれない)をどこかに意識しながら観ることでまた違った側面が見られるものと思う。

 

続いて「Angel Beats!」については、これのどこに人生が感じられるのかということを中心的に述べることとしよう。  (後編に続く)